東京高等裁判所 昭和51年(ネ)1847号・昭51年(ネ)1925号 判決
ところで前記一において認定した事実によれば、第一審被告鈴木と同斉藤との間において当初締結された売買仲介委託契約においては、売買代金額中七五〇万円を超える金額をもって仲介報酬とする旨の約定が存したが、その後両者間の合意により右報酬額算定の基準金額が七五〇万円から七八〇万円に変更されたのであるから、本件山林(一)の売買契約の成立によりその仲介人らが売主である第一審被告鈴木に対して報酬金を請求することができるかどうか、及びその金額は、変更にかかる七八〇万円を基準として決定されなければならないものというべきところ、最終的に確定された本件山林(一)の売買契約の代金額はこれに満たない七七三万であること前記のとおりであるから、仲介人らは結局第一審被告鈴木に対し仲介報酬を請求する根拠を有しないものといわなければならない。もっとも、前記認定によれば、報酬算定の基準となるべき金額が右のように変更されたのは専ら第一審被告鈴木と同斉藤との間の合意によるものであり、第一審原告らはこれに関与せず、右変更の事実を告知されたことも、これを了承したこともないのであるから、第一審原告らに対する関係では右変更の効果が及ばず、第一審原告らは当初の約定に基づき売買金額中七五〇万円を超える金額につき仲介報酬としてこれを第一審被告鈴木に請求することができるのではないかとの疑問がないではない。しかしながら、第一審被告鈴木が直接本件山林(一)の売買仲介を委託したのは第一審被告斉藤であり、仲介報酬についての約定も右仲介委託契約の一環としてなされたものであって、第一審原告らは右契約の直接の当事者ではないのであるから、たとえさきに説示したように、第一審被告鈴木において同斉藤が更に第三者に仲介を委託すべきことを予知し、これを容認しており、したがってこれらの者の仲介によって売買契約が成立した場合にかかる再受託者に対して直接約定の報酬金の支払義務を負うべき関係にあるとしても、かかる再受託者の権利は、専ら第一次の仲介委託契約を基礎とし、これに依拠して成立するもので、その委託者と右再受託者との間の直接の契約に基づいて発生するものではなく、第一次の仲介委託契約中に報酬に関する約定が存するときは、当然これに拘束されざるをえないものといわなければならないのである。そして他方第一次の仲介委託者は、その受託者との間で当初の契約における報酬金額の約定を変更することももとより自由であるから、かかる変更約定をしたときは、ことさらに再受託者の報酬請求権を害する目的でこれをする等信義則上対抗力を否定すべき特段の事由のない限り、たとえ右変更について再受託者の了解を得なかったとしても、その変更の効力を再受託者に対抗しうるものと解さなければならない。(第一次委託者に対する第一次受託者の報酬債権と再受託者のそれとが不可分的であるか可分的であるかは、第一次委託者と第一次受託者の報酬変更契約及びその効果に関し上記説示するところになんら制約をもたらすものではない。)もしそう解さないと、最初の仲介委託者は報酬金額の約定の改訂について直接の受託者から再受託を受けた者の有無を確かめ、これを探し出してその者に右改訂の告知をしなければならないこととなるが、これは委託者に難きを強いるものであって、その不当なことは明らかであり、第一次委託者としては第一次受託者が当然右事実を再受託者に告知することを期待してしかるべきものというべきである。もっとも、右のように解すると、実際に改訂の事実を告知されなかった再受託者は不測の損失を受けることとなるおそれがあるが、かかる損失の填補は専ら改訂の告知を懈怠した再委託者との間でこれを図るべきものであり、第一次仲介委託者に対してこれを請求すべき筋合のものではない。しかして本件の事実関係の下では、第一審被告鈴木において同斉藤との間で報酬約定の内容を変更したことにつき第一審原告らとの関係で信義則上対抗力を否定されるべき特段の事由があったとは認められないのであるから、結局前記のとおり、第一審原告らは第一審被告鈴木に対しては、本件山林(一)の売買契約成立による仲介報酬を請求することができないといわざるをえない。
(中村 石川 高木)